Lesson2



「ふぁ・・・」

今日からタイタン・ハイスクールの新学期が始まった。スクールバスの1番後ろの隅っこという特等席をゲットしたエレン・イェーガーは気だるそうに窓枠に頬杖をついて流れる景色を眺めていた。

なんの変わり映えもせず、特に面白いことも無い。ただ学校に行き勉強して帰ってご飯を食べて寝るだけの生活だ。

「(なんか面白ぇ事起きねぇかな・・・)」

バスが停り、ブザー音と共にドアが開く。
ゾロゾロと密度が増えていくバス内にまたハァ・・・とため息を着くと

「エレーン!おはよう!」
「・・・おはよ」

ひょんな事から不良のジャンに絡まれた所をエレンに助けられたアルミン・アルレルト。あれからアルミンはエレンにべったりなのだ。

「ね、ね、キック・アス見た?!」
「あー・・・まだ」
「も〜早く見てくれよ」

頬を膨らませたアルミンはあっと何かを思い出し、顔を明るくさせると

「そういえば、今日から新しい先生が来るんだってしかも日本から!」
「へぇ〜」
「いいなぁ日本・・・僕もいつか行きたい!アニメ、アキバ、コミケ!! 今学期から選択科目に日本語が追加されるみたいで、丁度日本語覚えようかなぁって思ってたんだ!日本語覚えれば、字幕なしでアニメ観れるかも・・・へへ・・・! ねぇ、エレンは選択どうする?」
「んー・・・日本語ねぇ」

エレンは外の景色を眺めながらつぶやく。
別に成績は悪いわけではない。しかし、何か刺激が欲しいと思っていたエレンはアルミンを見ると

「俺も日本語とってみようかな」
「やったー!」
「闇の騎士、力の代償として良心を奪われた私もジャパ王国の言語の科目を神判するのが最高の贅沢。それは、この物語を紐解けばわかるかもしれない・・・」
「やあミカサ、キミも日本語の科目を取るんだね」
「・・・いや、お前なんで今ので分かったんだよ」

アルミンと一緒になぜか付き纏ってくるミカサ。派手なゴスロリファッションをして、謎の言葉をぶつぶつと言うためスクールの生徒からもヤバい奴と思われ、距離を置かれている。



わいわいと盛り上がる2人の会話をBGMに、エレンはまたため息をついて外の景色を眺めるのであった。




***




「やれやれ、新学期早々汚してんじゃねぇぞ・・・」

リヴァイはブツブツ言いながらも新学期で賑やかになった廊下の清掃をしながら歩いていると、聞き慣れない言語が教室から漏れてきていた。

「日本語の表は行き渡りましたか? それを元に自己紹介を作ってみましょう。分からない所があれば遠慮なく聞いてね」

朝会ったナマエの通る声が聞こえ、生徒が返事をする。チラリと通りすがりに覗き見ればナマエはニコニコと生徒達に日本語を教えている。


それを眺めていると背後から肩をガシッと掴まれた。

「リヴァイ、君には何が見える?」
「・・・・・・は?」

リヴァイは驚いて顔だけ振り向くとそこには歴史教師のエルヴィンが立っており教室の中を見つめていた。

「あれはナマエ・ミョウジ先生。今日から入った日本語の担当教師だよ」

俺としたことが気づかなかった。エルヴィンと一緒にいたハンジが眼鏡を光らせながらこちらを見てニヤニヤと笑っていた。

「なーに?リヴァイのストライクゾーンドンピシャだった?」
「・・・違う。」
「アナタが背後を取られるなんて珍しいのに。いやぁ可愛い子だよ!ザ・日本人って感じで礼儀正しいし、緊張しちゃってるみたいで言葉は多くなかったけど何とかやれてるね。」
「授業になるとスイッチが入るようだね。」

そう言いながらハンジも窓を覗き込んで安心したように微笑んだ。




***





授業が終わり、エレンはアルミンたちとランチをとろうとしていたが

「(やべ、ペンケース忘れた)悪ぃ、忘れ物あるから戻る」
「うん」

アルミンとミカサと別れ、エレンは教室に入ると驚いて固まった。教室には、ナマエが居り掃除をしていたからだ。

ナマエはエレンを見るとにこりと笑い

「あら、ええと・・・エレン、だよね・・・?どうしたの?」
「・・・あの、忘れ物を」
「忘れ物? もしかして、これかな?」

そ言って教卓に置かれたペンケース。それを見たエレンはほっと一安心した。

「ありがとうございます」

スクールには決まった教室もクラスメイトも居ない。各自で時間割を作り、生徒が各教室へと移動するシステムになっている。
この教室も他の生徒が入ってしまえば、このペンケースは誰かの物になってしまっていただろう。

エレンはペンケースをリュックに入れると教室を掃除しているナマエを見て

「ナマエ先生は、清掃員も兼ねているんですか?」
「え?違うよ」
「じゃあ、何で掃除を・・・」

掃除なら、清掃員の仕事だ。
あの元マフィアと噂されている目つきの悪い清掃員が常に目を光らせている。
時間が経てばあの清掃員が掃除にしにくるのに、なぜわざわざ・・・と首を傾げた。

「んーなんていうか、癖かな。次使った人が気持ちよく使えるようにとか、さっきのエレンみたいに忘れ物があればすぐに気づくでしょう?」
「確かに・・・」
「エレンは財布を落としたことはある?」
「一回だけ」
「その財布は戻ってきた?」

そう言えば財布は戻ってこなかった・・・とエレンは首を振ると

「日本で財布を落とすと80%の確率で落とし主の元に戻ってくるの」
「えっ!?」
「お財布の中にはもちろんお金もあるけど、免許証とか子供の写真とか大事なものが沢山入ってる。無くなったらその人が困るっていう思いやりがあるから財布が高確率で戻ってくるの。もちろんお金も全部ね。」
「へえ・・・」

日本という存在は知っていたが、初めて聞いた話にエレンは前のめりになって日本という文化の話に聞き入ってしまった。

「・・・他の国の話を聞くのって、面白いでしょ」

今まで見たことが無い人間、刺激のある話。
エレンはこくりと頷くと

「俺たちとは正反対なんですね・・・あの、ナマエ先生。俺も掃除手伝います」

その言葉にナマエは嬉しそうに頷くとエレンに箒を手渡した。










・・・昼休憩こそ、清掃をする打って付けの時間だ。
早めの昼食を終えたリヴァイは生徒や教師がランチに行っている隙に、張り切って教室のドアを開けると

「・・・ん?」

床にはだいたいガムのゴミや飲みかけのペットボトルが置かれているのだがそれが見当たらない。リヴァイは教室をぐるりと歩いたが、すでに清掃はされているようだ。

「ここ、掃除したか?ボケるには早すぎると思うが・・・・・・あ」

この教室を最後に使っていた人物・・・ナマエだ。
利用者一覧に書かれたナマエを見たリヴァイは鼻で笑うと

「オイオイオイ、俺の仕事が無くなっちまうじゃねぇか」

そう呟くとスプレーを取り出し窓を拭き始めた。




prev
next


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -